2023-09-06 スタッフBlog
酸蝕症(さんしょくしょう)という病気はご存知でしょうか?
初めて聞いた方や名前だけ知っている方もいらっしゃると思います。
虫歯や歯周病に続く第三疾患と言われており注目を集めています。
今回は酸蝕症についてお話しします。
目次
酸蝕症とは
酸蝕症とは、飲食物の酸性の物質によって歯の表面のエナメル質が溶けてしまう(脱灰という)疾患の事です。虫歯や歯周病とは違い、細菌の関与はしていません。
虫歯や歯周病は糖分を摂取し、細菌達が酸性を出すことによって歯が局所的に溶けて穴ができたり、歯槽骨が溶けてしまいますが酸蝕症は飲食物や胃酸が直接歯に触れる事で歯面全体のエナメル質が広範囲に溶け出してしまいます。
酸蝕症の特徴として歯に歯垢やバイオフィルムの付着が見られず、光沢がありツルツルしています。
酸蝕症の主な症状や特徴
・知覚過敏で冷たいものがしみやすくなる
・エナメル質が溶け、内部の象牙質が透けて見えてくる
・歯の表面にツヤがある
・前歯の先端部分が透けており、ヒビが入ったり、欠けたり、ザラついたりする
・酸蝕により奥歯のすり減りが加速し、深い溝やへこみがみられる
・詰め物被せ物に境目ができ、取れやすくなる
酸蝕症になる原因
酸蝕症には、内因性と外因性の2つに分類されます。
・内因性
胃液が体内から口に逆流してくることによって生じます。胃液は酸性度がとても高く逆流性食道炎、摂食障害などによる嘔吐によって歯に触れ、エナメル質が溶かされていきます。
・外因性
酸性度の高い飲み物や食べ物を習慣的に摂取することで生じます。さらに酸性のものに糖分が配合されていると、より虫歯(複合う蝕)の進行が早く、この時期は熱中症対策でスポーツドリンクを飲んでいる方も多いですが、酸蝕症になりやすいので要注意です。食べ物では、果物のオレンジやグレープフルーツ、酢の物、ドレッシング、梅干しが該当します。
当院に受診されている酸蝕症の方の多くの共通点は”飴を舐めている方”が多いです。
酸蝕症はフッ素で防げる?
フッ素の働きには再石灰化の促進、脱灰の抑制など様々な働きがあります。虫歯のような細菌が糖分を栄養にし酸を産生し徐々に穴ができる場合には効果が期待されますが、酸蝕症を起こすような飲食物を摂取した場合、フッ素の再石灰化が間に合わずエナメル質がどんどん溶け出していきます。そのため酸蝕症を予防するには酸性の飲食物などを控えるといった原因を改善するのが重要になります。
酸蝕症の予防
・酸性の飲食物を日常的な摂取を控える。
レモンやお酢などの酸性度が高いものは出来るだけ控えましょう。完全に無くす必要はありませんが、口にする頻度を減らすことでも酸蝕症の予防になります。習慣的に摂取することで、細菌が酸に対して強くなりお口の中が虫歯になりやすい環境になっていきます。
・酸性の飲み物を飲む時は、ストローを使う。
酸性のものが歯に触れることによって起こる現象です。ストローを使いできるだけ歯に触れないようにするだけでも予防になります。
・だらだら長い時間は食べたり、飲まないようにする
歯に酸性のものが長く触れると、それだけ溶け出す量も多くなります。一気に飲むなりして、対策していきましょう。
・直後に歯磨きは控えましょう。
酸性のものを飲食した直後に歯磨きをすると普段よりも歯ブラシで削れてしまう量が増えてしまいます。30〜60分くらいはあけてすると良いでしょう。
・唾液の分泌を促進させましょう
お口の中が酸性になると唾液の緩衝作用で中性に戻るように働くのと、再石灰化の促し、脱灰する時間を短縮させます。よく噛むことで唾液を分泌させる効果があるため、キシリトールのガムなどよく噛むものはオススメです。
・乳製品を取り入れよう
無糖ヨーグルトや牛乳、チーズといった乳製品には酸性のもの入っていますが、カルシウムやリン酸が多く入っており歯が溶け出しにくいです。なので酸性食品と一緒に食べるといいでしょう。
・フッ素を取り入れる
酸蝕症に対して、再石灰化が間に合わずに溶け出してしまうと書きましたが、フッ素を取り入れることはとても大切です。フッ素入りの歯磨きや、フッ素入り洗口液で洗口させるだけでも予防になります。そして定期的に歯科医院で高濃度フッ化物の塗布を受けましょう
まとめ
歯が溶け出すのは虫歯だけではありません。そして虫歯のように一本だけ進行するのではなく、広い範囲で少しずつ進行するのでなかなか気づきにくい疾患です。酸蝕症による症状や特徴を見て、もし当てはまるものがあれば予防策を取り入れ、進行する前に早めに受診しご相談ください。